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点検評価と課題 分子研リポート2000 | 分子科学研究所

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4.点検評価と課題

昨年度は研究系の点検評価を行い、国内外の分子科学の指導的立場にある方々から、貴重な御提言をいただいた。本 年度は、分子科学研究所に所属する大型研究施設である極端紫外光実験施設について、外部評価を御願いした。特定 の研究テーマに関する研究会をいくつか開催し、それらを通じて分子科学研究所の現状とこれからの展望を探る試み がなされた。

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4-1 極端紫外光実験施設(UV S O R )

外部評価委員として以下の3氏に依頼した。

神谷幸秀 東大物性研教授 (光源加速器を中心に施設評価) 菅 滋正 阪大基礎工教授 (固体分光 を中心に施設評価) 柳下 明 物構研  教授 (気体分光 を中心に施設評価)

事前に資料(過去の外部評価結果、現在の共同利用の実態説明等)を各委員に送付した上で、平成12年12月に毎週、 委員1名ずつ評価のために来所していただいた。当日は、まず全体の評価方針についてUVSOR施設長(小杉信博)か ら説明した後、各委員が3施設助教授(加藤政博、鎌田雅夫、繁政英治)に対して担当業務についてのヒアリングを 実施するとともに、UVSOR施設の現場視察を行い、評価結果をまとめていただいた。外部評価委員間で直接、意見を 調整することはしていないが、評価結果はすべて評価委員全員に報告し、それぞれ加筆修正を依頼し全体の評価とし てまとめるようにした。以下では各委員の最終評価報告をそのままの形で項目別に整理し直して掲載したものである。 なお、各施設利用ビームラインの評価のところでは、所内研究者専用ビームライン(施設利用ではなく協力研究とい う形で共同利用に供している)を含めて簡単な概観を加え、各施設利用ビームラインの背景がわかるようにした。

以下の外部評価結果については平成13年1月よりUVSOR施設のホームページに公開し、共同利用研究者からの意見 を聴取しながら施設運営に役立てているところである。また、平成13年1月31日のUVSOR運営委員会でも運営委員 間で外部評価結果について意見交換を行った。

4-1-1 UV S O R の設備

・古いコンポーネントが多く老朽化が進んでいる。特に R F 空洞と受電・冷却水設備は深刻である。性能的にも世界レ ベルから大きく遅れてしまっているので、更新の緊急度が非常に高いと判断する。

・これまでかなり老朽化対策が施されてきているが、加速器施設の根幹をなすシンクロトロンの電源、ライナック(特 に電子銃)等、大きな個所に手がつけられず残っているものがある。これらは近い内に致命傷になると思われるので、 概算要求で予算措置をするのでなく、早急に、分子研として特別の予算措置をして対策することが必要であろう。

・加速器の開発研究(高度化計画の準備など)を行うためのスペースが全く不足しているので、所の空き実験室のス ペースを手当することが望ましい。

4-1-2 UV S O R の組織

・光源加速器関係のスタッフが少なすぎる。例えば、物性研では、放射光リング(S OR -R ING)の運転のために、所内 措置で、光源加速器関係で教授1人、助教授1人、助手2人、技官2∼3人の体制をとっていた。一方、UVSORは 物性研のリングの4倍強の規模であり、ライナックやシンクロトロン(入射器)も運転維持しなければならないにも 関わらず、教授0人、助教授1人、助手1∼2人、技官2∼3人であり、組織としては脆弱であると判断せざるを得 ない。可能なら、分子研として空き定員を流用するなりしてUVSOR光源グループを本来あるべき姿にすべきであろ う。

・UVSORは、国内の3つの全国共同利用施設のひとつでありながら、世界的にも非常識と思われるような少人数で、 加速器の維持・運転が行われている。特に専任の教授をおいていないことによって、分子研がUVSORを軽視してい ると所外から見られる危険性がある。また、専任教授をおいていないことのために、行政側からUVSORは大型施設 ではないと見なされかねず、予算要求の上でも不利になっていると思われる。放射光の施設は本質的に大型施設であ

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り、例えば、共同利用施設でない広島大の小型リング HiS OR のようなところでも、教授をおいて維持管理を行って いる。

・少なくとも2名程度の業務委託を導入して、加速器の運転と安全管理の業務を担当するようにするのが適切である と判断する。UVSOR施設では技官との棲み分けが難しいと思っている節もあるようであるが、Photon F actory で長 年にわたり行われている業務委託の実績から判断して、全く問題はないと考える。

・「分子研リポート」に報告のある外部評価で毎回指摘されているように、施設のビームラインスタッフの人員も極め て少ない。この状況は早急に改善されなければならない。定員増を望めない状況で直ぐに実行できることとして、 ビームライン側でも業務委託の人を3名程度雇うことを強く勧めたい。また、日常的な業務に対しては業務委託を導 入することによって、技官の専門職化・高度化も進み、施設の長期戦略も立てやすくなるはずである。

・人的資源が限られているので、利用度を無理に上げることはない。全般にもっと整備して増強すべき点が多々ある。 施設スタッフは一流の成果が上げられるビームラインにターゲットを絞るべきであるが、施設ビームラインとしては、 もっと利用者の力を引き出して整備を進める必要あり。

4-1-3 UV S O R の施設利用全般

・ビームラインが20本もあるのに、性能の良い分光器が極めて少ないことを知ったのは、大変なショックである。ま た、アンジュレータ光源が分光利用に有効に利用されていないことを認識したことも、驚きであり、大変なショック である。一流の研究成果を挙げていくためには、この状況を改善していかなければならない。より高いものを求める 姿勢が施設および利用者に強く求められる。

・真空封止型アンジュレータのR & D よりも今設置されている二基のアンジュレータでしっかり分光研究をできるよう にする方が優先順位は高い。

・各ビームラインの利用度、output に shut down threshold を設けておき、2期連続してこの threshold を下回るような場 合には、スクラップして、空きポート(empty beamline)を作るのも一法。空きポートには外部からのビームライン 建設(例えば名大、名工大、豊橋技大、豊田工大等)資金を PR T(Participating R esearch T eam)の形で導入すれば良 い。

・短時間の見学ではあったが、実験フロアを歩いた限りでは、若い利用者も多く、活気は十分あるとの印象である。彼 らが今後どの程度UVSORの定番利用者となっていくかが課題である。

・PF 、S Pring-8、UVSORを股にかけている利用者も多いので、各放射光施設の良い点、悪い点、技術開発状況等を常 に feed back できるような communication が大切であろう。

・UVSORは、これまで利用研究に比重をおき、運転されてきた施設であり、ビームタイムも年間を通して、広く利用 者に提供してきている。このこと自体は高く評価されるべきではあるが、建設後17年も経過して施設全体が老朽化 してきているので、年間、2ヶ月くらいは停止期間(2回なら分けてもよいと思われる。細分化すると効果はない) を確保して、維持・保守作業を行う必要があろう。これは、長期間の連続運転中で生じたいろいろな問題点や不具合 をきちんと解決するするためにも必要である。このような停止期間を今後、設けないとすると、解決が対処療法的に なりがちとなり、早晩、加速器を安定に運転していくことが困難になると判断される。 

4-1-4 UV S O R における開発研究(次世代光源技術関係)

・これまでのリング型FELの短波長化、安定発振等のビーム物理の研究分野において、UVSORはFEL専用リングで

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ないにも関わらず、成果を上げてきており、高く評価できる。現在、放射光を利用して研究している研究者からは理 解されない部分が多いとは思うが、FEL研究は将来の光源開発に必須の基礎技術のひとつであるので、UVSORでは、 その芽を引き続き育て行くべきであろう。

・レーザーと電子ビームの相互作用を用いた光源開発にUVSORは適していると思われるので、光源研究者に余裕があ るならば、これらの研究も行うことが望ましい。

4-1-5 UV S O R の高度化計画

・今後数年間のUVSORの維持・保守の必要性は高い。

・現在、光源助教授が中心になって検討しているUVSOR高度化計画で力を入れることになっている挿入光源の性能向 上は極めて望ましい。

・UVSOR高度化計画はUVSORの将来ばかりでなく、我が国におけるこの研究分野の発展にためにも適したものであ ると判断される。ただし、現在の R F 空洞に問題が多いので、Photon F actory など所外の研究者と共同して新しい R F 空洞を開発することが必須であろう。また、電磁石システムの構成を見直し、Q マグネットと電源を1対1で構成す るなどの方策を講じることが望ましい。

・UVSOR高度化計画は、UVSORから一流の研究成果を出していくためには、たとえ概算要求が認められなくとも、 所内措置で最高プライオリティのプロジェクトとして取り組むべきものである。研究所の英断を期待する。

・UVSOR高度化計画は今のところ光源が中心になっている。施設測定系も二助教授が協力して集中的にビームライン の高度化を行うことが望ましい。同僚からの critical な意見はより良い構想やアイデアへの近道である。

4-1-6 UV S O R -2 計画(次期新光源計画)

・高度化計画は次期の新光源計画へとつなぐための経過措置として位置付られるべきものであろう。10年程度先には 新しい光源を建設しないとUVSORでの研究そのものが陳腐化するのは必定であろう。ただし、現敷地を更地にして そこに建設するという計画の現在案はあまりにも非現実的ではないかと思われる。聞くところによると、最近、新し いキャンパスが岡崎機構のものとなったとのことであるので、適当なスペースがあるのであれば、そこに次期計画を 実現するのが最も適切で、かつ実現性が高いと考える。

・UVSORのような大型施設の今後のあり方を検討する際には、分子研の中の一施設としてではなく、機構直属の組織 と位置づけることなどを視野に入れていく必要があろう。これは次期計画の早期実現のためにも望ましいと判断する。

・放射光を利用した分子科学を飛躍的に発展させるためには、新光源は必要不可欠なものである。当然のことながら、 充分に説得力のある分子科学研究からのニーズと利用者からのニーズを基本にして、本計画の詳細を詰めていく必要 があろう。

・次期リングのパンフレットには施設利用ビームライン(利用者の協力の下に建設)とあるが、施設スタッフにはビー ムライン建設・運営に関してすべて責任を持つというプロ意識がまず求められる。今後の新たな人事が行われる際に は考慮されたい。その上で、利用者と一体になって建設すべきであろう。

・放射光学会での「放射光の将来 Grand D esign」の議論を経た上での検討を要する。名大放射光計画を吸収する形で の案にしない限り、納税者の理解は得られない。

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4-1-7 UV S O R の施設利用ビームライン

(1) 照射ビームライン

(背景)UVSORでは光誘起新物質合成実験等の研究のため、分光器を置かず白色光の利用研究にも創設期から力を入れ て対応しており、UVSORの一つの特徴になっている。これらは装置持ち込み自由なビームラインとしても位置 付けている。施設利用ビームラインとして外部評価対象になったのは B L 8A と B L 3A 1(B L 3A 2 と切り替えて準 単色光のアンジュレータが利用できる)の2本である。また、それ以外に所内ラインとして2∼3本(整備中 のもの含む)あり、極端紫外光科学研究系宇理須恒雄教授のグループが研究を展開している。光誘起新物質合 成という観点では、分光した光も必要な場合があり、所内ラインでは多層膜分光器を使った研究も行われてい る。

・B L 8A

連続なスペクトルを持ち、安定な光源である放射光には、このような利用の仕方もある。今後も、これまでの運用 の方針でよいと思われる。但し、施設スタッフにメンテナンスのための過度の負担がかからないようには配慮すべき である。企業の利用者を勧誘してもよいのではないか。

・B L 3A 1

研究成果が特に高いとは思えない。free tuning できるアンジュレーターに性能向上しないと、利用者が研究成果を上 げるのは困難であろう。このままでも十分な工夫により成果を出し得るとは思うが、むしろ分光器を用いて高エネル ギー分解能で単色化した利用の方が今後の発展の期待が持てる。その意味ではブランチビームラインである B L 3A 2 の アンジュレータ利用分光器においての性能向上が必要であろう。

(2) 赤外・遠赤外ビームライン

(背景)UVSORは世界の他施設に先駆けて赤外・遠赤外線領域での放射光利用が開始された施設として世界的にも有名 である。放射光赤外・遠赤外線は通常光源にはない指向性という特性がある。今回、施設利用ビームラインと して外部評価対象になったのは B L 6A 1 である。この B L 6A 1 はUVSOR課題研究や客員助教授ポストを利用して 創設期からこれまで継続して重点整備してきたビームラインである。以前は所内ラインにも赤外・遠赤外ビー ムラインが1本(B L 6B )あったが、最近、研究内容の見直しがあり、B L 6B は宇理須恒雄教授グループによっ て照射ラインに転換利用されている。

・B L 6A 1

試料を持ち込むだけで高度な測定が出来るように整備されている。研究レベルの高い成果も出ており、今のままで 十分一流の研究成果が上げられるビームラインである。現状では元々のビームライン建設グループや測定装置建設グ ループが中心になってビームタイムを使っているようであるが、国内の潜在的利用者は多人数と考えられる。従って、 S Pring-8の赤外ビームラインとの住み分けとともに近しい利用者の勧誘に積極的に取り組むべきである。国際競争力あ り。

(3) 真空紫外ビームライン

(背景)UVSORはビームエネルギーが最も低いクラスの放射光施設である。他の大型施設(1 GeV を越える高いビーム エネルギー)ではほとんど利用できないエネルギー領域として極端紫外光(あるいは真空紫外光)がある。こ のエネルギー域で高性能な分光器を作るには高輝度である必要はないので、高度化せずとも現UVSORで十分高

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性能な分光器は可能である。ただ、UVSORでは創設期に真空紫外ビームラインとして設計の楽な瀬谷波岡型分 光器を重点的(4カ所)に整備したため、高性能な直入射分光器への転換が遅れた。今回、施設利用ビームラ インとして外部評価対象になったのは B L 1B と B L 7B の2本である。B L 1B は創設期に作られた瀬谷波岡型分光 器であり、B L 7B の方は最近、ようやく高性能な直入射分光器に置き換わったものである。また、他に所内ライ ンとして3本の真空紫外ビームラインがあったが、B L 2B 2 は極端紫外光科学研究系見附孝一郎助教授のグルー プの研究の展開に合わせて瀬谷波岡型分光器から斜入射分光器に転換された。残る2本のうち1本は瀬谷波岡 型分光器であり、現在、極端紫外光科学研究系小杉信博教授のグループの世話で基礎生物学研究所の研究(生 物試料の光刺激感受性、耐紫外線特性等)に転用されている。また、B L 3B は高性能が狙える直入射分光器であ り、見附孝一郎助教授のグループが利用しているが、創設期に作られたものなので老朽化が問題になっている。

・B L 1B

装置自身は極めて一般的なものであり、性能も月並みであるが、利用度は高く成果も上がっている。先端の研究が ある程度 B L 7B(直入射)に移ったあとでも、ニーズがあれば汎用ビームラインとして維持するに値する。しかし、新 規投資を行うには慎重さが必要である。どう手を加えても今後は一流の成果はあげられないであろう。利用者が減っ ていく時期には、主として初心者教育や新規実験のテストなどに使用する事を考えた方が良い。利用者の力を借りる 形も一つの方法と思われる。

・B L 7B

十分な利用者層に支持されているように見える。まだ目玉となる成果は得られていないようであるが、今後、分光 器駆動ソフトの整備と利用者の習熟によって大きな成果が期待できそうである。また、若い研究者の教育も各利用者 グループで進んでいるようであり、今後に期待できる。ハイレベルの実験のためには後置鏡微駆動機構の改造などが 望まれる。V UV 領域は当面UVSORと HiS OR でカバーしていって欲しい。したがって、これまで利用者主導で整備さ れてきたとしても、今後適当な時期に施設スタッフも力を入れて整備を短期集中的に行うことをすすめたい。

(4) 軟X線ビームライン(低エネルギー)

(背景)創設期には真空紫外と軟X線の境目(100~150 eV)まで測定可能な平面回折格子を使った斜入射分光器が整備 された。これらは所内ラインとして今なお研究に利用されている(B L 6A 2 はUVSOR施設鎌田雅夫助教授、 B L 8B 2 は流動部門等の有機固体グループが担当)。さらに最近、見附孝一郎助教授のグループの所内ライン B L 2B 2において、これらとほぼ同じエネルギー領域の高性能斜入射分光器が瀬谷波岡型分光器から転換された。 このエネルギー領域はUVSORクラスの放射光源ではアンジュレータが最も効果的にカバーできるところである。 そのため、UVSORではB L 3A 2に真空紫外アンジュレータを分光するための斜入射分光器が創設期に建設され、 気体分光の施設利用に提供されている。また、B L 5A に最近、円偏光アンジュレータ(自由電子レーザー開発研 究と併用)が導入され、斜入射・直入射併用の新しい分光器によって固体分光の施設利用研究が行われている。 今回、これら2本の施設ラインについて評価を受けた。

・B L 3A 2

本ビームラインは、2.2 m の定偏角型分光器が設置されていて、第一ミラーを切り替えることによって、偏向磁石か らの光とアンジュレータの光を使い分けることが出来るようになっているが、アンジュレータが使えるにも関わらず、 使っていない研究は内容としても時代遅れのものであり、近いうちに打ち止めにすべきであろう。アンジュレータを 使った研究としては 分子研ならではの特徴を生かした見附グループのレーザー併用実験が研究内容・技術的なレベル

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ともに高く評価できる。ただし、マシン運転時にアンジュレータのギャップが変えられないためと、B L 3A 1 における 分光器なしの実験のためだと思われるが、光源を使い分ける運用になっている。このような中途半端な利用は即刻改 善すべきである。アンジュレータと分光器の更新を含めて第一優先で分光ビームラインとして整備すべきである。PF で豊富な経験のある加藤助教授と繁政助教授の力を合わせば、10から150 eV の領域での先端的な分子分光の研究(レー ザー併用実験を含む)がおこなえる facility にすることができるはずである。何故、これまでこのような手当てをして こなかったのか、理解に苦しむ。施設スタッフには中途半端な利用をいろいろ考えるよりもターゲットを絞る姿勢が 今後、望まれる。

・B L 5A

まだ、成果を問う段階にはないが、手を加えれば一流の成果が上げられるビームラインである。F E L実験と分光実 験の切り換えが容易となるように、若干、光学系の増強を行う必要がある。円偏光利用のためには極性反転が必要で あり、早急に光源の整備が待たれる。それと同時に、それに合わせてすぐに本格的測定に入れるように、スピン偏極 光電子分光装置の整備に全力で取り組むことが国際競争力を得るための必要条件である。

表面磁性の研究、レーザーと放射光とを共用した表面研究のテーマなどは依然として魅力的である。より多様な利 用者グループが申請を出して来る状況になるよう整備を進める事が急務である。利用者の力を借りる形も一つの方法 と思われる。現状では利用者層が薄い。

(5) 軟X線ビームライン(中エネルギー)

(背景)UVSORクラスのアンジュレータは真空紫外と軟X線の境目あたりを得意とする。それに対して偏向磁石部から の放射光の方は窒素 1s 内殻が励起・イオン化できる 400 eVあたりで最も光強度が大きく、中エネルギー領域

(数百 eV )の軟X線を得意とする。ただ、このエネルギー領域の分光器はUVSORの創設期にはあまり高性能な デザインのものがなく(今の技術から見て)、PhotonF actory とUVSOR施設それぞれグラスホッパー型分光器を 購入したのが汎用的に数百 eV あたりの軟X線が利用できるようになった始まりであろう。UVSORでは B L 2B 1 において施設利用に提供されている。その後、斜入射分光技術の大きな進展に合わせるようにUVSORでも装置 開発室を利用して試行錯誤しながら開発研究が行われ、現在、B L 8B 1 に気体固体分光のための施設利用ライン が設置されている。また、高分解能は要求しないという条件の下、機器校正・光学素子評価のための施設利用 斜入射分光ラインが B L 5B に設置されている。今回、これら3本の施設ラインについて評価を受けた。なお、最 近、所内ラインとしてUVSOR施設繁政英治助教授が中心になり、極端紫外光科学研究系小杉信博教授のグルー プとの共同チームにより最新の分光技術を導入した斜入射分光器が B L 4B に完成した。UV S OR においても分解 能の点では PhotonF actory や S Pring-8 の高性能な斜入射分光器と遜色ない性能に到達している。

・B L 5B

連続なスペクトルを持ち、安定な光源である放射光には、このような利用の仕方もある。今後も、これまでの運用 の方針でよい。但し、施設スタッフにメンテナンスのための過度の負担がかからないようには配慮すべきである。

・B L 2B 1

分光器自身が一時代昔のものであり、高性能は期待できない。どう手を加えても二流、三流の成果しかあげられな いであろう。固体表面のコインシデンス実験は HiS OR や PhotonF actory に移りつつあり、今後このビームラインを維持 する必要性が高いとは思われない。これ以上の予算投入は無駄になると思われる。将来はスクラップして、新しいテー マのビームラインを建設する方向での検討が必要である。

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・B L 8B 1

分光器の性能が充分出ておらず、分子分光分野では一流の研究は全く期待できない。しかも、先端的分子分光の研 究のためには、小杉教授の研究室メンバーの協力の下、繁政助教授が建設・整備している B L 4B が近々使えるようにな るので、B L 8B 1 を分子分光(気相)で使う理由はもはやない。ただ、B L 2B 1 のグラスホッパー分光器と較べれば、性 能は数段上である。したがって、分解能・光強度をそれほど必要としない B L 2B 1 のコインシデンス分光の研究をこの ビームラインで行うようにすれば、研究の質は数段向上するものと考えられる。

(6) 軟X線ビームライン(高エネルギー)

(背景)UVSORのビームライン整備の創設期の指導原理はエネルギー領域を万遍なくカバーし、いろいろな分子科学研 究に応用する可能性を探ることにあった。そのため、1 keV 越えの高い軟X線はUVSORクラスの光源では不得 意なエネルギー領域であるにも関わらず、B L 7A に軟X線ウィグラー(一度、更新している)を導入し、400 eV あたりに光強度のピークがあるUVSORの光源を 1 keV を越えるところまでシフトさせて利用研究を開拓した。 創設期にはこのエネルギー領域を斜入射分光器で分光するのが難しいとされていたため、硬X線分光用の S i 結 晶 よ り 結 晶 面 間 隔 が 広 い 分 光 結 晶 を 探 索 し た ( 現 在 、 分 光 技 術 が 向 上 し た 斜 入 射 分 光 器 で カ バ ー で き 、 PhotonF actory や S Pring-8の得意なエネルギー領域になっている)。一般的にそのような結晶は放射線損傷が大き いにも関わらずUVSORでは使えたために世界的に見ても成果を挙げることができた。また、軟X線ウィグラー が故障したが、幸い新しい良質の分光結晶が見つかりウィグラーの必要性もなくなった(ウィグラーがあると 放射線損傷のため光強度が得られない)。今回、この施設ライン B L 7A について評価を受けた。なお、所内ライ ンとして比較的新しい B L 1Aがあり、現在、小杉信博教授グループが研究を展開している。

・B L 7A

魅力ある二結晶分光器ビームラインとはいい難いが、気軽に新しいサンプルの NE X A F S が測定できるステーション としての存在意義は認められる。利用希望のグループ数も多いので、現在のアクティビィティーを維持していく程度 には手当てをしていったほうが良いであろう。

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4-2 ワークショップによる点検評価

4-2-1 物質科学の側面からみた分子科学研究所

(2000/7/30-31、2000/10/6-8)

分子科学研究所は、広義の物質科学の研究機関であり、これからの研究の進展のために、物理と化学の領域を超え た連携体制が必要である。そのため、わが国での物性科学を代表する研究機関(東北大学金属材料研究所、高エネル ギー加速器研究機構物質構造研究所、東京大学物性研究所、京都大学化学研究所)の研究者が分子科学研究所を訪問 し、物理と化学の立場から今後の連携研究体制についての意見を交換し、今後積極的な物理と化学の物質科学に関す る協力体制を構築することとした。

4-2-2 真空紫外光源とその応用

(2000/9/18-19)

真空紫外光は、光源の開発が進むとともにその産業応用に目が向けられ始めてきている。この様なときにあって、基 礎研究としてのシンクロトロン放射光がますます重要になってきている。一例を挙げれば、次世代半導体リソグラフィ 用光源にも真空紫外レーザーが導入されることが検討されており、その際のレジストなどの基礎物性の評価には、放 射光が不可欠である。また、半導体デバイスプロセスにも真空紫外光CVDが注目を集めており、今後真空紫外光の応 用範囲は広がりを見せることは必定である。分子科学研究所においても、高輝度の真空紫外∼極端紫外光源としての 放射光施設の充実を望む声が大きい。

4-2-3 非線型波長変換ディバイスとその分子科学における可能性

(2000/10/12)

2000年10月12日に岡崎コンファレンスセンターにおいて分子制御レーザー開発研究センター、特に特殊波長レー ザー開発研究部が中心となり「分子科学応用を目指した高機能波長可変全固体レーザー」(サブタイトル:固体レーザー と非線形波長変換の最前線)と題したワークショップを開催した(英文;Advanced Tunable Solid-State Lasers for Molecular Science Applications—The Art of Solid-State Lasers and Nonlinear Frequency Conversion Devices—)本研究会では固体レー

ザー及び波長変換分野において指導的な立場にあるスタンフォード大学の R .L . B yer 教授(前同大学副学長、同大学現 C NOM センター長、前米国光学会会長)および光・量子エレクトロニクスのパイオニアである霜田光一教授など分子 研外部からも20名余の参加者を迎え、研究最前線に関する活発な議論を行った。最後にレーザーと分子科学の接点を 探るべく自由討論を行い、現状の確認と今後の方向性を議論した。 活発な発言や討論が続き予定していたプログラムを 1時間以上超過し、同センターや研究室の見学などが大幅に圧縮されることとなった。なお、このフリーディスカッ ションは、一ヶ月後に開催が予定されている分子制御レーザー開発研究センター運営委員会を意識して行ったもので あり、設置されて三年近くが経過する同センターの点検評価の一環となるような有意義な討論が行われた。会議の詳 細は既に分子研内部資料として報告済みであるが、電気学会研究会資料(OQD-00-47~55)としてもその内容が 公開さ れている。

4-2-4 時間分解振動分光

(2000/10/23)

海外評議員の一人であり振動分光の分野の重鎮であるドイツ・ヴュルツブルグ大学のキーファー教授の来日にあわ せて、関係分野についての点検評価のためのワークショップを岡崎コンファレンスセンターで2000年10月23日に開催 した。キーファー教授の講演の他に、小林孝嘉東大教授、江幡孝之東北大助教授、岡本裕巳東大助教授(現、分子研 教授)、田原太平分子研助教授の講演があり、そのあと、特に時間分解振動分光の分野に焦点をしぼって現状と将来に

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4-2-5 レーザーセンター研究会

(2000/11/14-15)

平成12年11月14,15日の両日にわたり「分子研レーザーセンター研究会─ レーザーと分子科学の融合を目指して」 と題する研究会を開催し、分子位相制御、放射光同期、特殊波長という3つのレーザー開発研究部の研究成果と展望、 及びこれに関連する研究発表が行なわれた。どの発表に関しても活発な討論が行なわれ、内容が高く評価された。こ の研究発表討論をふまえて「レーザーと分子科学の将来」と題する自由討論を全員で行なった。討論では分子科学を 代表する研究系とレーザー科学を代表するセンター開発研究グループの連携に関して多数の意見が述べられ、このよ うに大きく分野を越えた共同研究の将来性が確認された。

4-2-6 R . N. Z are 教授の特別講義

(2000/11/21-22)

分子科学研究所の外国人評議員(大学教授)と全国の分子科学を専攻する大学院生の会合を持ち、分子科学研究所 における大学院教育について討論を行った。分子科学研究所が大学共同利用機関ならびに総合研究大学院大学として、 次代の指導的な研究者の育成を行う上での、研究のあり方、講議のあり方について忌憚のない意見交換があった。大 学院生に対する教育は、学問的知識の教授に留まらず、基礎研究の意義、研究者と社会との関わりといった問題に対 してまで踏み込んだ討論が必要であるとの認識で一致し、今後ともこのような外国人評議員や大学院生を交えた討論 の重要性が確認された。

4-2-7 日韓セミナー

(2001/1/10-11)

分子研の国際協力事業に関する点検評価の一環として、日韓合同セミナー「気相、凝縮相および生体系中の光化学 過程:実験と理論の協力的展開」を2001年1月10日より3日間、愛知県岡崎市、岡崎コンファレンスセンターにおい て開催した。本セミナーは韓国側から Mu-S hik J hon 教授を始めとする研究者13名、日本側からは茅分子研所長を始め として全国の大学・研究機関から20名の研究者の参加のもとに行われ、日韓協力事業を中心に日韓双方で行われた光 化学過程に関するこれまでの研究を総括し、今後の課題について検討を行った。

4-2-8 分子科学における錯体化学の役割

(2001/1/24-25)

平成13年1月24日から25日まで、上記のテーマに関する研究会を岡崎コンファレンスセンターにおいて開催した。 評価委員として伊藤翼(東北大)、中村晃(阪大名誉教授)、干鯛眞信(東京理科大)、若槻康雄(理研)の4名の先生 に参加して頂き、20件の口頭発表と20件のポスター発表を行った。所外から44名が参加し、所内からも多くの参加者 があった。

金属錯体は実に多様で興味ある機能を発現するため、触媒化学、生化学、材料科学など幅広い分野で研究対象となっ ているが、これらの研究分野間に渡り、お互いに議論をする機会は非常に希である。今後、新しい境界領域を開拓を するのに若手研究者どうしが積極的に交流し、意見交換を行っていくことは重要である。今回、金属錯体の研究を行っ ている、異なった分野の若手研究者を中心に研究会を組織した。講演会場だけでなく、コーヒーブレイクでも活発な 討論が繰り広げられ、上記の研究会開催の目的は十分に達成できたと考えられる。

最後に評価委員が総括を行い、異分野の研究者の交流の重要性を強調された。また、マンネリ化に陥ることなく、既 成の枠に捕われない錯体化学に関する研究会を分子研・錯体化学実験施設が中心となって開催することが必要である と述べられた。

参照

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